第247章

「けっこう、おいしいわ」

 水無瀬柚季は出されたスープを飲み干し、気遣わしげに鷺沢雪紘の手にある絆創膏へ視線をやった。

 鷺沢雪紘は気にした様子もなく答える。

「大したことない。久しぶりに厨房に立ったから、少し手元が狂っただけだ。それより、もっと食べてくれ」

 彼が尽くせば尽くすほど、水無瀬柚季の心には居心地の悪さが募っていく。

 彼女は箸を置いた。

「私、しばらくここを離れようと思うの」

 鷺沢雪紘が料理を取り分けようとしていた手が止まる。彼はゆっくりと箸を置き、彼女を見た。

「どこへ行くんだ?」

「H市よ」

 テーブルに並んだ手料理を見る鷺沢雪紘の瞳から、食欲という色...

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