第60章

陸川明希の執務室を出たところで、雨宮澪が水無瀬柚季を励ますように言った。

「先生も言ってたじゃない。光ちゃんの経過は順調だって。そんなに心配することないわよ」

水無瀬柚季は静かに告げた。

「光ちゃんに、話したわ」

「話したって、何を……」

雨宮澪はハッとして足を止めた。

「まさか、父親が鷺沢雪紘だってバラしたの?」

「ううん。ただ、パパはまだ生きてるよって」

「あんたねえ、無鉄砲すぎるわよ!」

雨宮澪が声を荒らげたが、水無瀬柚季の次の一言が、彼女のすべての反論を封じ込めた。

「光ちゃんには、自分の父親が誰なのかを知る権利があるもの」

雨宮澪はしばらく沈黙し、重い...

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