第100章 何と呼ぶべきか

神宮寺蓮の視線が、一瞬だけ西園寺希美の顔に留まった。

彼女の頬が朱に染まっているのを目にした途端、彼の瞳の色が沈んだ。脳裏をよぎったのは、幼い少女が甘えた声で「お兄ちゃん、大好き」と口にする光景だ。

胸の奥から、得体の知れない苛立ちが湧き上がってくる。

この呼び方は、違う。

苛立ちは隠しきれず目尻に滲み出し、男はふいと視線を逸らした。西園寺希美の挨拶は、完全に無視された形となった。

西園寺希美は彼が顔を背けるのを目の当たりにした。その露骨な無視によって、心に宿っていた恥じらいは瞬時に屈辱へと変わり、身の程知らずな淡い憧れは、この瞬間に音を立てて崩れ去った。

胸の奥がツンと痛む。彼...

ログインして続きを読む