第103章 馴染みの人と物

言い終わるや否や、西園寺希美の口から小さなあくびが漏れた。

どうやら、本当に眠気が限界に達しているらしい。

神宮寺蓮は彼女から視線を外し、さりげなく車の速度を緩めた。

希美が車内でまどろんだのは、ほんの束の間だった。せいぜい二十分ほどだろうか。車が静かに停車すると、彼女は浅い眠りから覚め、ぱちりと目を開ける。

窓の外には鬱蒼とした自然林が広がっているが、その風景には奇妙なほどの既視感があった。

彼女は弾かれたように身を起こし、車窓の向こうの全景を視界に収めた。

「桜ヶ丘?」

西園寺希美の声が思わず上ずった。

桜ヶ丘――それは数年前に海市で開発されたばかりの高級住宅地であり、涪...

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