第16章 これは命令だ

「仕事の件はチーフディレクターに話をつけておく。お前には休暇を取らせる」

神宮寺蓮の口調に、拒絶を許さない支配者の響きが宿る。

「トラブルは俺が処理する。お前はただ現場に行って、細部のチェックだけしていればいい」

「私は……」

「議論の余地はない」

神宮寺蓮は冷徹に遮った。その瞳から温度が消え失せる。

「これは命令だ」

西園寺希美は彼の凍てついた瞳を見つめ、そしてその背後に控える西園寺玲奈の、勝者然とした振る舞いを目にして、急激な悪寒に襲われた。

何か言い返そうと唇を動かしたが、喉が詰まったように声が出ない。

彼にとって、彼女には最初から「ノー」と言う資格など与えられていな...

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