第17章 偽りの親切は要らない

神宮寺蓮は救急箱を手に彼女の歩み寄ると、その場にしゃがみ込み、箱を開けて消毒液と綿棒を取り出した。

「足を出せ」

「偽善はやめて」

西園寺希美は足を引っ込め、冷ややかに言い放った。

「死にはしないわ」

「動くな」

神宮寺蓮の声が低く沈む。彼は無造作に手を伸ばし、彼女の足首を鷲掴みにした。その万力のような力強さに、希美は思わず眉をひそめた。

ひやりとした綿棒が傷口に触れた瞬間、鋭い痛みに息を呑む。反射的に足を引こうとしたが、びくともしない。

「神宮寺蓮、放して!」

彼女は身をよじって抵抗した。その拍子に眼縁が赤く染まり、長い間堰き止めていた感情のダムが、ここに来て決壊した。

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