第179章 流血

しかし、黒田洋二(くろだようじ)は予想だにしなかった。これほど厳重に警戒していたにもかかわらず、やはり問題が起きてしまったことを。

中国時間の午後十一時半、桜ヶ丘一号(さくらがおか・いちごう)の衛星電話が鳴り響いた。

「西園寺(さいおんじ)さんが出血なさいました!」

電話の主は晴山(はるやま)で、その声は慌てふためき、今にも泣き出しそうだった。

黒田洋二は本来、仕事を終えて退勤するつもりだった。だがその報告を聞いた瞬間、眠気など吹き飛び、帰宅のことなど頭から消え去った。彼は弾かれたように跳び起きると、リビング横にあるテイスティングエリアへと走った。

その騒々しい足音に、神宮寺蓮(じ...

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