第186章 橘昌浩との初対面

カンヌ。

夜の帳が下りる頃、一台の白いアルファードがカイルサ・ホテルの地下駐車場へと滑り込んだ。

車庫内は静寂に包まれており、保冷車の低いエンジン音だけが響いている。

数分後、その唸るような音が止むと、今度は電動スライドドアが滑らかに開く摩擦音が静けさを破った。

「足元、気をつけて」

低く囁かれたその言葉には、溢れんばかりの気遣いが込められている。

ストールに身を包んだ女の顔には、隠しきれない眠気が漂っていた。先に車を降りた青年に手を引かれ、地面に降り立った瞬間に一つ、あくびを漏らす。

「あーあ、まったく。ずいぶんと遠回りさせられたな」

橘奏太は凝り固まった体をほぐしながら、...

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