第22章 なんたる皮肉

乱れた衣服、汗ばんだ頬に張り付く髪……。彼女の顔には、病的なまでの紅潮が浮かんでいた。

男は身なりを整えると、ドアを開け、振り返りもせずに去っていった。

ドアが閉まる瞬間、西園寺希美はようやく顔を上げた。

ブラインドの隙間から差し込む陽光が、彼女の体にまだらな光と影を落とす。それはまるで、醜い傷跡のようだった。

彼女はゆっくりと体を起こし、床に散らばったしわくちゃの服を拾い上げ、一枚一枚、身につけていく。

その動作は緩慢で、言いようのない疲労と屈辱が滲んでいた。

「……狂ってる」

誰もいないオフィスに向かって、彼女は低く呟いた。その声は聞き取れないほどに掠れている。

涙はもう...

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