第29章 決心

第4章

橘奏太の声はどこかおどおどとしており、こちらに向けられた視線にも深い憂慮が滲んでいた。

だが、西園寺希美はただ手の中のビール瓶を虚ろな目で見つめるだけだった。

会社から遠く離れた今もなお、あの二人から受けた屈辱が、西園寺希美の脳裏で何度も反響していた。

彼女は髪を鷲掴みにしてうつむいた。

脳裏にフラッシュバックする断片的な記憶――周囲の人々の嘲笑や陰口、そして神宮寺蓮が何の感情も見せずに背を向ける直前、その瞳に浮かんでいた深い苛立ち。

『片付けろ』

その簡潔な言葉はまるで呪いのように、西園寺希美の満身創痍の心の奥底にこびりついて離れなかった。

その様子を見て、橘奏太の...

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