第38章 花見美代子の売り込み

橘奏太のその言葉には含みがあった。

西園寺希美が振り返ると、ちょうど西園寺玲奈が神宮寺蓮の腕に絡みつき、唇を引き結んでこちらを一瞥したかと思うと、橘奏太の袖を引いて会場の奥へと向かうところだった。

「あんな連中のことなんて気にするなよ。縁起が悪い」

神宮寺蓮は車を降りる前から、並んで立っている西園寺希美たちの姿を認めていた。その瞳の色は暗く沈んでいる。さらに希美が自分から橘奏太の手を引くのを見て、彼は不快そうに眉をひそめた。

西園寺玲奈は、そんな神宮寺蓮の表情の変化に気づいていなかった。

彼女もまた、希美の隣に立っているのが橘奏太であることに気づき、その悪運の強さに驚いていた。

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