第47章 殴るのはお前だ

橘奏太たちが西園寺希美のもとへ歩み寄る。

希美は車を降り、撮影スタッフの手を借りて身体を起こした。

「希美姉さん!」

石丸弘通は興奮を隠しきれない様子で、力いっぱい腕を振った。

「凄すぎるよ! 素人で一分四十秒だなんて!」

橘奏太は呆れたような、しかしどこか恨めしげな視線を向けた。

「手加減しただろ?」

希美は首を振った。

「いいえ。久しぶりだったし、これだけ走れれば上出来よ」

そう言いながら、彼女はヘルメットを外した。

その時、城戸和彦が笑顔で顔を近づけてきた。

「いやあ、西園寺さんにこんな才能があったとはね。僕はとんだ掘り出し物を見つけたようだ」

その言葉に、希美...

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