第49章 買い手

神宮寺蓮は視線を落とした。その瞳に映るのは、西園寺希美の露わになったうなじと、華奢でありながらも女性らしい丸みを帯びた体躯だけだった。

彼はドアに押し当てていた手を滑らせ、ロックの外れたドアノブを無造作に回した。

「入れ」

男が短く命じる。西園寺希美はほとんど突き飛ばされるようにして部屋の中へと押し込まれた。

カチャリ。

二人が足を踏み入れると同時に、背後のドアが無機質な音を立てて閉ざされた。

西園寺希美は玄関に立ち尽くしたまま動こうとしない。その表情は冷ややかで、声には強情な響きが混じっていた。

「西園寺玲奈のことで来たのなら……私は謝らないわ」

神宮寺蓮は彼女を一瞥し、軽...

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