第76章 自ら薬を飲む

西園寺希美が作画に没頭している最中、神宮寺蓮は部屋に入ってきた。

晴山さんが閉めていったドアを、風呂上がりの西園寺希美は鍵もかけずにいたらしい。男は大股で部屋に踏み入ったが、その足音は決して小さくなかったにもかかわらず、彼女の意識を引くことはなかった。

彼が西園寺希美のすぐ側まで歩み寄って初めて、彼女は部屋に他人がいることに気づいた。

ヘッドホンを外し、視線を上げる。そこに神宮寺蓮の姿を認めると、彼女の表情が曇った。

「何か用?」

「明日、西園寺家に戻れ」

神宮寺蓮の口調は平坦で、相談ではなく、完全なる通告だった。

ただでさえ気が立っていた西園寺希美は、その言葉を聞いてさらに苛...

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