第5章

私は完璧に身じろぎもせず、深く息をしたいという衝動と戦っていた。傷口から流れる血が肌に生温かい。だが、私が生きていると彼らに知られるわけにはいかなかった。

「それで、これからどうなるんだ?」龍一が尋ねた。「あんたの望み通りにしたぞ」

「落ち着け」と和也が言った。彼の声は今やまるで別人だった。冷たい。まるで誰かの死を扱うのではなく、ビジネスの話でもしているかのような声色だ。「計画通りに進める」

「彼女、動かす?」と彩花が訊いた。

誰かが一歩近づいてくるのを感じた。嗅ぎ慣れた彩花の香水の匂いに、吐き気がした。

「まだだ」と和也が答えた。「龍一、ここを出たら何をするつもりか、正確に言...

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