第6章

キッチンから戻ってくる彼らの足音が聞こえた。その音は、俺が床に横たわっているすぐ近くでぴたりと止まった。

「よし」和也が言った。「警察に電話する時間だ。準備はいいか?」

「待ってくれ」龍一の声は神経質に響いた。「もう一度だけ、段取りを確認したいんだ」

「もう十回以上も確認したでしょ」彩花が言った。声には苛立ちが滲んでいるのが分かった。

「でも、どうしてこのアパートを選んだのかって聞かれたらどうする?」

「窓から高価な物が見えた。単純な話よ」

「建物内の防犯カメラをチェックされたら?」

「廊下にはないわ。もう確認済みよ」

「もし.......」

「龍一、落ち着け」和也が遮っ...

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