第101話

アシュトンが廊下を歩いてきた。

ゆったりとした黒のボタンダウンシャツに、揃いのズボン。袖は肘までまくり上げられている。

派手さはないが、目を引かずにはいられない。

彼は片腕に掛けていたベージュのカシミアのショールを、私の肩にそっと羽織らせた。

それから私の両手を取り、彼の手のひらでこすり合わせる。その指は暖かかった。

「冷え切ってるじゃないか。どうしてもっと暖かい格好をしてこなかったんだ?」

「平気よ」私はショールを体に引き寄せ、彼ににっこりと微笑んでみせた。「ちょっと外の空気を吸いたかっただけ」

「医者には安静にと言われたはずだ。ほら、行くぞ」

「わかったわ」私は差し出された彼に腕を絡めた。...

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