第176話

「面白いこと言うわね」私は呟いた。「さっさと寝てよ」

彼がランプのスイッチを切った。

静寂。

私たちの間には、大人の男が三人入れるくらいの隙間があった。

それぞれが自分の掛け布団にくるまっている。

目に見えない境界線を、シワひとつ越えていない。

片目を開けてみた。

暗くてよく見えなかったが、一分もすると目が慣れてきた。

彼は仰向けに横たわり、両手を枕の下に入れ、ゆっくりと穏やかな呼吸を繰り返している。

私はじっと見つめた。

彼は身じろぎ一つしない。

それが不気味だった。

彼は……行儀が良すぎた。あまりにも。

いつもならキスをせがんでくるのに。

あるいは、私の顔に触れるためのくだらない口実を考え...

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