第196話

振り返った。

取調室からカシアン・ラングフォードが出てきた。糊のきいた黒いスーツに、片腕には長いコートを引っ掛けている。

彼は私を見ながら話しかけてきたが、その視線はイヴェインへと滑り、彼女のすぐそばに立つケイドの上で止まった。

彼は眉をひそめた。

ケイドがイヴェインに寄りかかり、ぐったりとしたうめき声をあげながら彼女の肩に身を預けた。「イヴィー」母音を伸ばしながら、彼はつぶやく。「すごく痛いんだ」

カシアンが睨みつけた。

私は顔をそむけ、笑いをこらえた。

「ここで何をしてるの?」私は彼の質問をそのまま投げ返した。

「交通事故だ」カシアンは上の空で答えた。

彼の視線は、ケイドの怪我を確かめるの...

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