第220話

ローラン・グローバル・ホールディングス。最上階。個人オフィス。

ブラインドは下ろされ、照明は薄暗く落とされていた。

アシュトンはデスクの後ろに座っていた。その手はぴくりとも動かず、表情は読み取れない。

向かいに座るドミニクが、低く慎重な声で報告を終えた。

アシュトンが口を挟まず、眉もひそめなかったのを見て、ドミニクはようやく息を吐いた。

「こちらに署名が必要です」彼はそう言って、フォルダーを前へ滑らせた。

アシュトンが素早く目を通し、注釈を書き込み、手早くサインしていく間、ドミニクは一つ一つの書類を読み上げた。

「他には?」

その声は平坦だった。余計な返事を許さない響きがあった。

こんな所にい...

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