第230話

アシュトンが手を差し出した。

その何気ない仕草に、少年はびくりと体を震わせた。

彼は無言でケースを差し出した。

アシュトンはそれを受け取ると、イヴェインに渡した。

彼女はケースを受け取り、自分のバッグに滑り込ませた。

「大丈夫か?」とアシュトンが彼女に尋ねた。

イヴェインは頷いた。

彼は私の方に振り返り、手を差し伸べた。

私はその手を取った。

私たちは振り返ることなく、共に外へ歩き出した。

回転ドアを抜けた途端、カシアンが駆け寄ってきた。まるで目に見えない尻尾を振っているかのように、イヴェインに満面の笑みを向けている。

私はアシュトンに尋ねた。「ここで何してるの?」

「君に会いに来たんだ」それ...

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