第256話

私は耳をこすりながら、一番近くの椅子に沈み込んだ。これから始まるであろう、長くて辛辣なお説教に身を構える。

イヴェインは期待を裏切らなかった。

「婚約して数日後にはパリに飛んじゃうし、結婚式の準備なんて指一本動かしてない。そしたら赤いドレスの謎の女を見つけた途端、アシュトンが彼女に恋してるに違いない、全部おしまいだって決めつける。彼に聞きもしないで。まるで何か問題が起きるのを待ってたみたい。彼女が絶好の口実をくれたってわけね。実際に何かあろうがなかろうが、あなたはどうでもいいのよ。ただ抜け出したいだけで、今その理由が手に入っただけ」

まだ電話に出ていることを示すために、私は何度か曖昧な相槌を打...

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