第37話

一日中うじうじ悩んでいたけれど、まだ決められずにいた。

結婚はアイスクリームのフレーバーを選ぶのとはわけが違う。

「あ、やっぱりこっちじゃなかった」なんて言って、簡単にやり直しがきくものじゃないのだ。

もしアシュトンがただのアシュトン――そこそこの仕事に就いていて、まあまあなユーモアのセンスがある、ただの男の人だったなら、私も二つ返事で飛びついていたかもしれない。

でも、彼は違う。

彼は、あのアシュトン・ローランなのだ。

ローラン・グローバル・ホールディングス、ローラン・タワーズ、そして小国を買い取ったとかでニュースになる、あのローラン家の。

私が自分のアパートでぐるぐると考え込んでいると、イ...

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