第120章 キャンバスの中の少女

ギィ――。

扉が開く音だった。

温井知夏の心臓が、一瞬で喉元まで跳ね上がる。

だが、指先ひとつ見えないほどの闇の中、足音は聞こえてこなかった。

しばらく息を潜めて待ってから、温井知夏はようやくほっと息をつく。壁に手を這わせ、少しずつ前へ進んだ。

そのとき、わずかに隙間の空いた扉に触れる。

温井知夏は数秒ためらい、そっとそれを押し開けて中へ入ると、音を立てないよう静かに扉を半開きのまま寄せた。

部屋の中は、真っ暗だった。

仕方なくスマホのライトを点ける。

白い光の中に浮かび上がったのは、乱雑に置かれた大きなキャンバスの数々。そして、そこに描かれていたのは、一人の少女だった。

...

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