第141章 生まれ変わる

「うん」温井知夏は椅子の背にもたれ、いちばん楽な角度を探して顎を少し上げた。張っていた身体が、ゆっくりとほどけていく。

黒崎冬馬が口元をつり上げる。

彼女のために生まれ変われることが、嬉しかった。

車は温井の古い実家へ向けて走り出す。

温井知夏はバッグから判決書を取り出し、何度も何度も読み返した。鼻の奥が、理由もなくつんとする。

悲しいわけじゃない。嬉しいのだ。

あの頃は九条司に憧れて、夢みたいな気持ちで嫁いだ。けれど年月は、ただ擦り減っていっただけ。

それが今――ようやく、苦い海から抜け出せた。

これから先の人生、九条司とも九条家とも、二度と関わらなくていい。

そう思うだ...

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