第143章 彼らは昨夜、どうやらキスしたようだ

「たぶん……ないと思う」温井知夏は首を振って否定した。

それでも男の顔から心配が消えないのを見て、彼女はとっさに適当な言い訳を口にする。

「昨日、ちょっと飲みすぎたのかも」

「そうか?」黒崎冬馬は、信じたとも疑ったともつかない声で返した。

ただ、深く鋭い青い瞳が、瞬きもせず彼女の顔に貼りついている。

その視線のせいで、温井知夏の表情は隠しようがなかった。

熱を帯びた視線に気づき、彼女は目を伏せて逃げるように、サンドイッチへ意識を向けた。

しばらく、静けさが落ちる。

沈黙を破ったのは黒崎冬馬だった。

「……お前、昨日のこと覚えてないのか」

「な、なにを……っ」温井知夏は危う...

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