第147章 奇妙な客

ノックの音が響いた。

秘書が青ざめた顔で扉を押し開ける。

「黒崎社長……」

黒崎冬馬は目だけを上げて一瞥し、氷のような声で言い放った。

「さっさとつまみ出せ」

「お兄ちゃん……っ」

津崎詩織の瞳に、みるみる悔しさが滲む。

秘書は慌てて前へ出て、硬い表情のまま告げた。

「津崎さん、こちらはお入りいただく場所ではありません。お引き取りください」

ほんの一瞬目を離した隙に、まさか社長の私的領域へ踏み込まれるとは思わなかった。

普段ここに入れるのは自分だけだ。他の秘書ですら足を踏み入れられない。

社長には、度を越した潔癖と、強い独占欲がある。

例外はただ一人――温井知夏だけ。...

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