第148章 両方をつかむ

「彼は邸宅の執事で、姓は小林だと言っていました」

温井知夏は記憶を手繰り寄せる。だが、そんな人物に心当たりはない。

ピコン――

凛香が目を丸くした。

「知夏さん、相手から……手付金、前倒しで振り込まれてます」

六桁の手付金。安い額じゃない。

一般的な手付金なんて、せいぜい数千――よくて一万台だろう。

温井知夏は眉を寄せた。

「知夏さん、このお客さま、ほんと太っ腹です。十数万の手付金、何も言わずに入れてくるなんて」凛香は興奮気味で、顔いっぱいに喜色を浮かべる。

スタジオの売り上げが増えれば、彼女の歩合も増える。

凛香は不思議そうに首を傾げた。

「……うちが持ち逃げするって...

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