第160章 暴かれた

声を掛けられ、温井知夏は足を止めて振り返った。さっきの給仕だ。目尻に走る一本の傷痕が、妙に記憶に残る。

「当主様が、お客様のためにお車をご用意しております。ご自身で運転していただいて構いませんし、空港の駐車場に置いていただければ、こちらで回収に伺いますので」

そこまで気を回してくれるとは思わなかった。

「ありがとうございます」温井知夏は心から礼を言った。

「お客様、こちらへ」

案内されて目に入ったのは、黒のベントレーだった。

その瞬間、なぜか黒崎冬馬の顔が脳裏をよぎる。

――来てるの?

すぐに、知夏は小さく首を振った。彼はいまA市にいるはずだ。今回G港へ来ることを伝えたのは母...

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