第171章 実権奪還

「――知夏」

次の瞬間、相手がもう一度、名を呼んだ。

今度は聞き間違いじゃない。温井知夏が振り向くと、九条司がやけに情を込めた目でこちらを見つめている。

ぞわり、と腕に鳥肌が立った。

「……何がしたいの?」

声が荒れる。視線で殺せるなら、もう何千回でも殺している。離婚したのに、どうして前よりもしつこくなるのか――誰か教えてほしい。

九条司は穏やかな声で言った。

「知夏、別に何かするつもりじゃない。ただ……毎日、君の出勤と退勤に付き添いたいだけで」

「頭おかしいんじゃない?」知夏は冷たく遮る。「そんな暇があるなら病院で脳みそ診てもらいなよ」

ちょうどそのとき、エレベーターが彼...

ログインして続きを読む