第196章 触ってみる

男の甘く親密な言葉を聞いた瞬間、温井知夏の耳の奥がじわりと熱を帯びた。

あくまで恋人のふり――そういう約束だったはずなのに。彼に頷いてからというもの、黒崎冬馬は「偽り」をまるで「本物」みたいに扱ってくる。

キスをせがむだけじゃない。

それ以上の――。

温井知夏は、彼の別の顔を見てしまった。

荒々しくて、強引で。

受け止めきれないほどに。

舌でなぞり、弄ぶように甘く絡め取るその手つきは、あまりにも手慣れていた。

まさか――。

知夏は一歩、距離を取る。澄んだ瞳で彼を横目に見て、淡々と問いかけた。

「黒崎冬馬。あなた、前に……ほかの女の人と付き合ったこと、ある?」

もし「ある...

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