第197章 骨の折れる仕事

「知夏――」

黒崎冬馬の声は低く、懇願と切実さが滲んでいた。

熱い吐息が首筋にかかる。背後は扉、逃げ場のない距離。温井知夏は小さく喉を鳴らし、「……うん」とだけ答えた。

その瞬間。

柔らかな小さな手が、スラックス越しに、彼の熱を帯びた硬さへそっと重なる。

「っ……」

黒崎冬馬が堪えきれないように喉の奥で呻いた。額に青筋が浮き、腰を抱く手がさらに強くなる。骨の中にまで押し込むみたいに、彼女を引き寄せながら、耳元で甘く囁く。

「知夏……それだけじゃ足りない。もっと……」

温井知夏は伏し目がちに彼の下へ視線を落とし、首を横に振った。

「ここは……だめ」

扉のすぐ向こうだ。母が階...

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