第205章 ほろ酔い

「光栄です」

そう言い終えた瞬間、黒崎冬馬が身を屈め、薄い唇で彼女の、わずかに開いた艶やかな唇を塞いだ。

温井知夏は一瞬だけ目を見開き、次の瞬間にはそっと瞼を閉じる。熱のこもったキスを、受け入れるように味わった。

「わあ――」

周囲からどっとどよめきが上がる。

凛香と、もう一人の女性社員である上田美優は、きゃっと言いながら頬を染めて目元を手で覆い、唯一の男性社員加賀由貴は慌てて視線を逸らした。……のに、なぜか凛香のほうをちらりと盗み見て、耳の先がほんのり赤くなる。

たった一分。けれど、体感は一世紀みたいに長い。

コホン、コホン――。

咳払いの「合図」が聞こえ、温井知夏は慌てて...

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