第207章 長年、ずっと猫をかぶってきた

熱は最高潮に達していた。

窓の外は、夜がどろりと濃い。

ベッドの上で二人は抱き合い、唇を重ね、境目なんてどこにもなくなる。寝室の温度はじわじわ上がり、溶けてしまいそうだった。女の甘い喘ぎと、男の荒い息遣いが絡み合い、ひとつの旋律みたいに響く。

――そのとき。

温井知夏は、下腹の奥がずしりと落ちるように痛んだ。次いで、何かがとろりと流れ出る感覚。

まずい。

よりにもよって、こんなときに……!

頬が熱い。血が滲むほど赤くなる。

黒崎冬馬の大きな手が、さらに下へ伸びてくる。知夏は反射的にその手首を掴み、声を裏返らせた。

「だ、だめ……!」

黒崎冬馬の動きがぴたりと止まる。瞳の奥...

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