第222章 これは希望

その後、彼はどうにか逃げ出した。拾い上げて家へ連れ帰ってくれたのは、温井貴志だった。

温井貴志がしゃがみ込み、彼を見つめたあの目を、彼は一生忘れない。

同情でも、憐れみでもない。胸が痛むほどの心配――それだけが宿っていた。

「坊や、いくつだ? 家はどこだ」

「家はどこだ」なんて、どれほど久しぶりに聞いた言葉だろう。

それから先、温井家が彼の家になった。

温井拓海は療養所の門の前に三十分ほど立ち尽くし、それから踵を返して去った。終わるべきものは、もう終わっている。

事件が片づいたあと、温井知夏と黒崎冬馬が空港まで見送りに来た。温井拓海は古びた箱を彼女に手渡す。中身は、父が生前いち...

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