第32章 旅立ち帰国

マイクの興味津々な視線を受け、温井知夏は仕方なく額へ手を当てた。相手の言葉を遮るように口を開く。

「社長、どうか想像を膨らませないでください。本当に、社長が考えているようなことじゃありませんから」

卑下するべきではないと分かっている。

けれど彼女は、結婚もしている。子どもだって産んだ。

黒崎冬馬みたいな男を――自分が望むだなんて、どれほど図々しい話だろう。

それに今の温井知夏が望んでいるのは、ただ一つ。ちゃんと働くこと。恋愛なんて、もう二度と触れたくなかった。

それから三十分後。

雰囲気のいいレストランに入ると、温井知夏は先にメニューを黒崎冬馬へ差し出した。今日は自分が奢る側な...

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