第33章 人はみな変わるものだ

「知夏はもうすぐ着くから、あなたも早く出ていきなさい。あとで病院にお見舞いに来たふりをして、私と杏奈のところへ来るのよ」九条美幸が息子に念を押した。

「分かったよ、母さん」九条司は頷く。

母がベッドに横たわるのを確認すると、彼は足早に病室を出た。

その頃。

病院の正面入口前、銀色のポルシェが路肩にすっと停まった。

秘書が先に降り、車体を回り込んで後部座席のドアを開ける。

温井知夏はシートベルトを外しながら、感謝を込めて頭を下げた。

「黒崎さん、送ってくださってありがとうございます」

「温井さん、俺が言ったこと、また忘れてますよね」

黒崎冬馬の端正な顔に、苦笑がかすめる。

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