第41章 噛みつくウサギ

「……ああ」温井知夏は淡々と返した。

九条司に対する態度は、異様なほど冷たい。

だが九条司は気にも留めない。唇の端をわずかに持ち上げ、温井知夏に付き添って来た男――例の浮気相手へ、わざと挑むような視線を投げた。

視線を受けた黒崎冬馬は、青い瞳をすっと上げ、淡々と見返す。

――挑発。

九条司が誇示したいのは、温井知夏なのか。それとも「自分の家庭」への執着なのか。

黒崎冬馬は口元にかすかな嘲笑を刻み、そのまま相手を無視した。

次の瞬間、九条司の顔色が沈む。

温井知夏が固く閉ざされた救命処置室の扉を見つめ続けている隙に、九条司は黒崎冬馬へ歩み寄り、低い声で言い放った。

「お前がど...

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