第53章 俺の女にまで手を出す気だったのか?

「鈴木さん、先に私の質問に答えてもらえますか」

温井知夏の瞳の奥を、嫌悪がさっとよぎった。

鈴木謙一郎は眉を吊り上げる。

「なんだ? 俺がまだイケるかって聞きたいのか?」

「そんなこと、知りたくありません」

知夏は首を振り、鈴木謙一郎へ歩み寄る。音もなく背後へ回り込み、掌に握り込んでいた小さなナイフを、老いた首筋へ押し当てた。

「……何のつもりだ!」

鈴木謙一郎の顔色が変わる。

「お嬢ちゃん、俺と何か因縁でもあるのか?」

今夜、まさか小さな兎に噛まれるとは思わなかった――そんな目だ。

「鈴木社長。殺しません。ただ、いくつか答えてほしいことがあるだけです」

知夏の声は冷え...

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