第61章 恋人同士だと誤解される

次の瞬間、温井知夏はあたたかな腕の中へ強く抱き込まれ、そのまま横へ弾かれるように転がった。床の上を一回転して、ようやく止まる。

無傷のまま、温井知夏は男の胸元から顔を上げた。

目に飛び込んできたのは、鋭く美しい顎の線。

黒崎冬馬だった。

唇を開きかける。

「とう――」

ガシャーン――

不意に、耳をつんざくような破砕音が響いた。

びくりと身を強張らせ、温井知夏は反射的にそちらを見る。

ついさっきまで自分が立っていた場所に、天井のシャンデリアが落ちていた。無残に砕け散り、破片が四方へ飛び散っている。

周囲から悲鳴が上がる。

温井知夏は息を呑んだ。

――もし、さっき黒崎冬馬...

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