第71章 娘を羨ましがる

「ママ……もう、杏奈のこと、いらないの……?」

九条杏奈は傷ついた顔で、しゃくり上げながら縋りつくように言った。

「捨てないで……ママのそばにいたい……」

娘が言い切る前に、温井知夏は一切ためらわず拒んだ。

「帰って」

「やだ……帰らない!」九条杏奈は泣きながら首を振る。

雨粒みたいな涙がぽた、ぽたと落ちる。泣きながら、ちらりと知夏の顔色をうかがった。

――ママ、きっと抱きしめてくれる。

今までだって、杏奈が泣けば、いつも心配して、腕の中に抱いて、優しくあやしてくれた。

けれど、待っても待っても、抱擁は来ない。返ってきたのは、冷えた表情だけだった。

知夏は眉をきつく寄せ、...

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