第81章 それぞれの運命

「嫌よ」温井知夏は冷たく突き放した。

歯を食いしばり、ひとつひとつ噛み砕くように言葉を重ねる。

「私が手足を縛られて、水の中で必死にもがいて……あなたに向かって助けを叫んでたとき。あなた、何をしてたの?」

受話口の向こうは、しんと静まり返った。

温井知夏は鼻で笑う。

「あのとき、あなたは『ヒーロー』してた。清水環奈を助けるって、そう選んだのよね」

「環奈は泳げないんだ……」

「九条司。忘れたの? 私だって水が怖い」

九条司は、言葉を失った。

沈黙を確認すると、温井知夏はさらに畳みかける。

「そのとき私の命を見捨てるって決めたのに、今さら何の顔して頼めるの?」

短く息を吐...

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