第86章 仇敵道狭し

「九条社長、会社のことも少しはお考えください……」秘書の小林友岡は、気が気ではない様子で言った。

「駄目なものは駄目だ」

九条司は低い声で、ぴしゃりと遮る。

小林友岡はそれ以上なにも言えず、ただ深くため息をついた。

……

温井知夏は家で二日ほど静養していた。その間、母親に毎食これでもかとご馳走を食べさせられ、体重は見る見るうちに増えていった。

その日は、雲ひとつない穏やかな晴天だった。

このまま家に籠もっていたら、本当に身体に黴でも生えそうだ――そんな気がして、温井知夏は気分転換に出かけることにした。少し太ったのも気になっていたし、歩けば腹ごなしにもなる。

午後2時半。

温...

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