第89章 私たちの間に、秘密は要らない

小さな彼女に何度も問いかけられているうちに、黒崎冬馬はふと、からかってみたい気分になった。

「悪い。どうやら俺が無理に引っ張って、紐を痛めてしまったみたいだ」

少しばかり悔しそうな口調だった。

「えっ?」

温井知夏ははっとして、すぐに相手を気遣う。

「大丈夫です。私が弁償します」

自分から手伝いを頼んだのだから、そう思うのは当然だった。

その言葉に、黒崎冬馬の瞳の奥をやわらかな色がよぎる。

「俺が壊したんだ。弁償するのは俺だろ」

「だめです」

温井知夏は首を振り、くるりと向き直った。

「私が払います。だって、私がお願いして――」

そこまで言って、彼女はようやく気づく。...

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