第99章 片思いの少女

「冬馬さん」

黒崎冬馬のすらりと高い姿が目の前まで来ると、温井知夏は唇を噛み、気まずそうに口を開いた。

「すみません。私、気が回らなくて……」

「どうしたんです?」

黒崎冬馬は不思議そうに眉を上げる。

温井知夏はもごもごと続けた。

「こういうお店、たぶん初めてですよね。よかったら、別のお店に――」

「いえ、このままで」

黒崎冬馬は首を振った。

「ここでいいんです」

やわらかな声でそう言ってから、少し間を置いて付け加える。

「それに、ここは初めてじゃありません。昔、A大学に通っていた頃は、よく来ていました」

その言葉に、温井知夏は目を見開いた。

まさか黒崎冬馬が、昔は...

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