第7章

玲子視点

パーティーの夜、私は鏡の前に立ち、最後の身支度を整えていた。指先が触れる深い青のドレスは、滑らかなシルクの冷たさを肌に伝えてくる。

蓮司が私の瞳の色を引き立てるからと、わざわざ選んだ一着。その言葉の裏には、彼の完璧な美学が息づいていた。この十年、彼は私の服を、髪型を、友人を、そして私の言葉までも選び続けてきた。

まるで、彼の隣に飾るための精巧な彫刻でも作り上げるかのように、私という存在を、彼の理想の型にはめ込んでいったのだ。鏡の中に映る私は、確かに美しい。

しかし、その完璧な姿のどこかに、私自身の輪郭がぼやけているような、そんな漠然とした違和感が、胸の奥で小さく波打...

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