第5章

 翌日の午後。ホテルの階下にあるカフェで、私はすっかり冷め切ったラテを前に座っていた。不意にスマホが震える。哲平からだ。

 彼は今しがた帰宅したのだろう――ならば、それまでの長い時間、また誰と一緒にいたのか? 答えは言うまでもない。

 長年の情がある。辛くないと言えば嘘になる。だが、愛情よりも大切にすべきものが、この世にはある。腐ったものは腐ったのだ。ゴミを拾い直すような趣味は私にはない。そんなことをすれば、夜中に目覚めるたびに吐き気が込み上げ、自分を何度も責め苛むことになるだけだからだ。

 私は通話ボタンを押した。

「律子!」彼の声は切迫し、狼狽していた。

「これまでの時間を、ど...

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