第8章

 律子が去ってから、二ヶ月が過ぎた。

 毎朝目が覚めるたび、俺は無意識に隣を振り返り、彼女の姿を探してしまう。だが、そこにあるのは主を失った枕だけ。その空虚さが、彼女はもういないのだという事実を冷酷に突きつけてくる。

 あの日、俺は関係を完全に清算するつもりで、知子をカフェに呼び出した。白いワンピースに身を包み、完璧なメイクを施した彼女。俺が切り出そうとしたその瞬間、彼女は一枚のエコー写真をテーブルに滑らせた。

「哲平、赤ちゃんができたの」

 彼女は微笑んだ。その瞳は期待に満ち溢れていた。

「私と結婚して」

 俺はその写真を凝視した。だが、脳裏に焼き付いていたのは、去り際の律子の...

ログインして続きを読む