第4章

「大丈夫よ」

私は、そう言った。最近よく口にする、何の根拠もないおまじないのような言葉だった。

「パパ、帰ってくる?」

「分からないわ、遥斗」

彼は、悪い知らせを受け入れる小さな大人のようにこくりと頷いた。そして、私の心臓を凍りつかせるような一言を付け加えた。

「レイヴンって、パパに意地悪だよ」

「どういうこと?」

「昨日、咲良ねえねの荷物を取りに来たとき、僕、ドリーおばさんの窓から見てたんだ。レイヴンが、何かでパパに怒鳴ってた。それに、他の男の人たちのことも、じろじろ見てた」

『他の男?』

八歳の遥斗が、私がまったく気づかなかったことを見抜いている。

私は遥斗...

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