第10章

九条陽向の目には、柚木結華は「男女の最後の一線」だけは守り抜くものの、それ以外はいつだって優しくて従順で、好きに扱わせてくれる女に映っていた。

「会場で、ずっとお前のこと探してたんだ」

九条陽向は少し拗ねたみたいに言う。

「まさか、叔父さんと一緒にいなくなるとは思わなかった」

「さっき、どこにいたの?」

柚木結華はまっすぐに彼の目を見て尋ねた。

たしかに、自分もしてはいけないことをした。

それでも――先に裏切り、先に彼女を汚したのは九条陽向だ。

三年間、彼を見てきた。観察してきた。

身も心も、全部渡すつもりでいたのに。

……もしも、なんてない。

「トイレ行ってさ。あとバ...

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